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小町が紅としてサインした書類。
裏切り者が紅に手渡したと云う。
ならば、紅が怒り狂い、書類を処分する方法が無いかとウーラは考えた。
行き着いた答えはあの孤島だ。
根を上げるまでこき使ってやる!
と、云う訳で…。
孤島だと知らない紅は、激しい波を渡る船に揺られ、場違いなワンピースを着てうなだれていた。
大きな荷物の中は、化粧品やれブランドの服、枕なんかも詰め込んでいるらしい。
空港から、ウーラと紅は終始無言だった。
紅にも意地があるらしく、寧ろ感心してみたり。
到着した島に立ち、紅は愕然と立ち尽くしていた。
「リゾートじゃない!」
「…俺にとってはリゾートだ」
ニヤニヤと笑うウーラを睨み付け、紅は叫ぶ。
船は既に沖へ向かっていた。
「本当に…小町が此処に居るのよね…?」
「…あぁ、忘れてたが、小町は遅れるらしい。何でも、養子にしてくれた叔母さんが帰国するって連絡があったから、アンタの両親に最後の挨拶を…」
「…アンタ…騙したわね!!私、直ぐに戻っ…あれ…?荷物が無い…携帯が…」
慌てる紅を眺め、ウーラはゲラゲラと腹を抱えて笑い出した。
「自分の事は自分でしろよ?頼むなら、自分で頼まなきゃ駄目だろ?俺がお前の為に荷物を降ろすと思ったのか?」
「…直ぐに連絡するわ!電話貸しなさいよ!」
「この島に電話は無い。連絡手段なんて無いんだ。あの船は定期船だからな、小町が来るまでこの島から出られない。残念だったな…お嬢様?」
憤慨する紅を置いて、ウーラは歩き出した。
同情の余地無し!
相手が泣いて喚こうが、気にしないのがウーラである。
初めて小町と会った時の事を思い出すと、申し訳無い気持ちでいっぱいだった。
だが、小町はウーラに負けなかった唯一のお見合い相手である事に変わりはない。
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