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島の管理を頼んでおいて良かったな…。
家も畑も動物も、変わらずに迎えてくれる。
長閑でゆっくりとした時間が流れていた。
紅は着いて来ないが、ウーラは全くお構い無しで自分の仕事を始める。
窓を全て開け、掃除をし、薪を割って釜戸に火を起こす。
以前は毎日一人でこなしていた筈だが、小町が居ないとなると寂しいものだ。
ウーラは妄想に浸っては我に返り、顔を真っ赤にして首を横に振る。
結婚と云う煩わしい人生の節目は、小町の出現により一変していた。
お見合いするのも悪くない。
小町は「こんなのお見合いじゃありません!」等と憤慨していたが。
運命の相手を探す気にもなれず、待っていたら向こうからやって来た訳だが、障害が多くすんなり行かない事に腹が立った。
そう…最大の障害となっている不粋な輩が居るせいだ。
「ちょっと!!」
泥だらけになった紅が、ズカズカと家の中へ足を踏み入れた。
淡いピンクのワンピースはボロボロ。
露出した腕や脚は傷だらけ。
ウーラに詰め寄り、怒鳴り散らしてくるが、顔色一つ変えず言い放つ。
「お前の泊まる家はこの隣だ。好きに使え」
「…私一人で!?」
「俺は一人が好きなんだ。それに、お前みたいな餓鬼に構っていられる程暇じゃないんでね」
「ご飯は!?お風呂は!?」
「自分でやんな」
それからウーラは、紅を放置して畑へ向かう。
小屋の方から聞こえた雑音もそこ吹く風。
収穫すると、水で泥を洗い流し、炊事場で調理を始めた。
「ちょっと!」
…中々しつこい奴だな。
溜め息を吐き、手を動かしながら、紅の相手をする。
あ、そうだそうだ。
思い出して、ウーラはニヤリと口の端を上げて笑う。
「アンタ、俺と結婚するんだろ?じゃあ、海に行って貝を拾って来い」
「何で私がそんな事しなくちゃならないのよ!」
「…俺と結婚すれば裕福な生活が出来ると思ってるのか?俺は学者だからな。色々と大変な場所にだって行かなきゃならない。結婚するならサバイバル経験が無いと苦労するぞ?」
言い返せないのか、紅の意地なのか、側にあったバケツを持ち、肩を怒らせて出て行った。
「…本気で結婚したいのか…?酔狂な奴だな」
中々良い根性だ。
けど、お前みたいな餓鬼と結婚するかよ。
ウーラは直ぐに紅の存在を忘れ、料理に勤しんだ。
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