不思議です!

6/19
前へ
/92ページ
次へ
何時までも泣き続ける紅の両脇を掴み、椅子まで運んでやったウーラは、小町が使っていた皿とスプーン、フォークを差し出す。 湯気の立つスープを注ぎ、パンを差し出した。 「…ほら、食え」 ぶっきらぼうにそう言って、ウーラも椅子に腰を下ろし、パンを口に運ぶ。 沈黙の中、紅は鼻を啜り、スプーンに手を伸ばした。 「…これ…小町のお父様のお店に出されてた野菜スープだわ…私…美味しくて…おかわりしてた…………私っ…寂しかった…小さなお店なのに、幸せそうに笑ってた小町が……羨ましかった…」 掬った野菜スープを口に運び、紅は苦笑いを浮かべる。 「…不味いわ…」 「…悪かったな」 「…でも…幸せの味がする…」 「…俺が幸せだからだろうな…小町が居てくれたらもっと美味くなると思う」 嫌いな女が目の前で笑った。 小さな紅は、大きな箱の中で退屈を持て余していたのだろう。 だが、紅が手に持っていた小さな箱は、行き場の無い思いを詰め込んだまま、行き場を無くした小町を押し込んだ。 小箱はいっぱいになって膨れ上がり、願望や妬み、寂しさを小町に食べさせて落ち着かせる。 自分をコントロール出来なくなってしまった紅は、小町自身を『箱』にしてしまったのだろう。 「理不尽な話しだな…」 「…貴方の…言う通りだわ…」 「話せば分かる奴なんだな」 「…失礼ね…」 「…小町が汚れるって事は、アンタ自身も汚れるからか…」 ピクッと動いた紅の肩をウーラは見逃さなかった。 コイツ…。 「アンタ…処女だな」 徐々に赤くなっていく紅の顔。 ウーラはまた腹を抱える。 「そうかそうか!そりゃお嬢様だもんなぁ!俺を誘惑するつもりでそんな露出の多い服を着てたんだろう?残念だったなぁ、あぁ、本当に残念だ」 「下品な!」 「あぁ?男ってのは下品なんだよ。頭ん中はイヤらしい事でいっぱいなんだ。でも安心しろ!アンタは対象外だ」 紅の反応は見ていて面白い。 単純な奴だな…。 ウーラにスプーンを投げつけた紅だったが、余程疲れているのか威勢が無い。 「…小町は俺が貰う。分かったならさっさと寝る事だ」 「小町は物じゃないわ!」 「アンタが言えた義理かよ」
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1888人が本棚に入れています
本棚に追加