不思議です!

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一1週間後― 船を待つ二人は、小町が来るまで、浜辺に落ちている貝殻を拾っていた。 紅は小町が着ていた質素なワンピースの裾を翻す。 「これでモールを作ったら素敵よね?」 「…小町が好きなら作れば良いさ」 意外な事に、紅は手先が器用だ。 何も出来ないお嬢様ではないらしい。 案外逞しい所もあった。 教えた事も直ぐに覚え、1週間経てば島の生活に慣れた。 小町が居なくても、紅は何だって一人で出来る。 「…あ!船だわ!」 美しいコバルトブルーの海に、一隻の船が揺られながらやって来た。 途中で停船し、ボートに乗って浜辺へ向かってくる。 「「小町ーっ!!」」 愛しの小町に会える喜びに嬉々として手を振るウーラと紅だったが…。 本人は二人を見て眉をしかめている。 そしてどことなく、雰囲気が暗い。 「…ウーラさん…お嬢様…」 「「小町!!」」 抱き付こうとする二人は、お互いに蹴り合い、押し問答を始めた。 「俺が先だ!」 「何よ!私が先でしょ!」 「俺達はそう云う仲なんだ!」 「私だってそう云う仲よ!」 「…あの…私…お邪魔ですよね…」 俯いて、小町は踵を返す。 「「邪魔じゃない!」」 押し留めた二人の気迫に、小町は驚いて頷いた。 「私…小町に謝らなくちゃいけないわ…今まで…本当にごめんね…」 ウーラの家の居間で、小町と紅は二人きりで話しをした。 「私…小町が羨ましくて…どうしようも無くて…酷い事ばっかりしちゃった…許してくれなくて良いの…謝って済む事じゃないわ。私…小町がお姉さんみたいな存在だったの。小町に甘えて我が儘言って、本当に…ごめんね…でも、小町が大好きなの。それだけは分かって欲しい…」 「…お嬢様…」 「小町を解放するわ」 目から零れた涙を、小町はハンカチで優しく拭った。 その表現は、慈愛に満ちている。 「許しすも何も、私はお嬢様に感謝しています。理不尽な事ばかりだったのは確かですが…お陰で父や母を亡くした悲しみを紛らわす事が出来ましたから」 「嘘…本当は私が嫌いだったんでしょう?憎かったんでしょう?」 迫る紅に苦笑いの小町は、正直に頷く。 分かっていてもショックを隠せない紅は泣き伏せた。 「私、結構単純なんで、明日には忘れてますよ!きっと」
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