不思議です!

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「…とりあえず…消毒!!」 持っていた籠を放り投げ、ウーラは小町の唇を奪う。 「…んっ…」 激しいキス。 恐怖のフランス人は軽く触れただけのキスだったのに。 ウーラのシャツを強く握り、小町は舌の刺激に力が入らずよろけていた。 支えていたウーラの腕は、そう簡単に離してはくれない。 朦朧とする頭の片隅で、ウーラの行動が子供っぽいと思っていた。 そして改めて「好き」だと確認出来る。 …やっぱり、ウーラさんが良い…。 ウーラさんじゃなきゃ嫌…。 甘いキスを交わす、恋人が纏う雰囲気は、二人だけの世界を創り出す。 が。 「何してるのよ変態ーっ!!」 少し開いた瞳に映ったのは、紅の蹴りが的中したウーラの顔だった。 小町も一緒に倒れ込み、籠から転がったトマトに顔を突っ込む。 「…貴様ぁぁぁぁ…!帰れ!今すぐ帰れ!」 「嫌よ!また小町を弄ぶつもりなんでしょ!?」 「弄ぶだとぉ!人聞きの悪い事を言うな!そう云う仲なんだよ!」 ギャーギャーワーワーと怒鳴り合う両者を、小町は黙って眺めていた。 犬猿の仲とは良く言ったものだ。 「…あの…」 「小町は私が守るのよ!誰がアンタみたいな似非外人に渡すもんですか!」 「俺は小町と結婚するんだよ!俺と小町は運命の赤い糸で結ばれた恋人なんだ!」 「古いわよ!時代錯誤も甚だしいわ!」 「……せからしぃわぁぁぁぁぁ!!」 …シーン… 小町が怒鳴ると、二人はピタリと止まった。 取っ組み合いの喧嘩は、小町の叫び声で治まる。 「…す…すまない…」 「…ご…ごめんなさい…」 二人が謝ると、小町は我に返って慌て出す。 「あ…私ったらつい…ごめんなさい…!」 「「……」」 一番怖いのは小町かも知れない。
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