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とりあえず、落ち着いて話しをする為に、三人は浜辺に座ってひとまず海を眺めた。
やはり口を開いたのは小町である。
「…ウーラさん…小夜子さんに予め事情を説明してくれてたんですよね?小夜子さんが是非お会いしたいって言ってました…けど…」
ウーラと紅の真ん中に座る小町は、膝を抱えてうずくまる。
少しだけ、ウーラの顔を見つめた小町は深い溜め息を吐いた。
「私…フランス語なんて知らないし…あのフランス人の素性だって分からないままなんですけど…小夜子さん、ウーラさんの事、やけに詳しかったんですよ。訊いたら、何でもあのフランス人が教えてくれたって…」
「…俺を知っているフランス人か…そう言えば、なんかやけにムカつくフランス人が居たな…。どこぞの金持ちで、女ったらし…やたらと俺に突っかかって来る奴だった。環境考古学専門の苛つくフランス人だ」
ウーラの様子から、その『苛つくフランス人』の存在は、差ほど気にも掛けない『煩わしいフランス人』だったのだろう。
確かに、ウーラはそう云った人間を嫌う節がある。
「友達居ないの?」
紅が訊ねると、目を細めてギラリと睨む。
「お前と一緒にするな。俺にだって友人くらい居る」
「そのいかがわしいフランス人、貴方に恨みがあるんじゃない?小町の言ってる破廉恥なフランス人が同一人物なら、貴方に悔しい思いをさせる為に、小町にちょっかい出してたりして。迷惑な話しだわ」
紅が推測した『同一人物説』に、ウーラの眉毛がピクリと動いた。
そして、何かを思い出しているのか、暫く耽った様子で海を見つめる。
「…金髪天然パーマ…?」
突然、ポツリと呟くウーラ。
小町は驚いて頷く。
「…背が高い…鼻高々の…」
「は…はい!」
「…何時も笑ってる…?」
「はい!」
「年は25か26位か…」
「はい!」
「ジョルジオ…フォン…スケルツォ…」
「知り合いなんじゃないですかぁぁぁぁぁぁ!!」
じゃあ、あのプロポーズはウーラさんへの腹いせって事じゃ…!
「すまん。何か良く分からないまま迷惑掛けたな」
サラリと言い放つウーラの首を小町は思いっ切り締め上げた。
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