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小町に携帯を持たせて正解だった。
ウーラは黴臭い大学の図書館で、古い本を片手に携帯を弄っている。
それから紅にメールを送った。
「これで良いだろ…」
「何が良いの?」
突然の声に驚いたウーラに、長谷部教授がケラケラと笑う。
「君って本当に面白いねぇ」
「…教授か…驚かすの止めてくれよ…」
「ごめんごめん。そう言えば昨日、ジョン君が来てたわよ?」
やっぱりな…。
予想していた事だったので、ウーラは差ほど驚いてはいない。
「君と違って、『郷に入っては郷に従え』を知らない子よね。フランス語で会話するなんて久しぶりだったから、何だかとても疲れちゃった」
「…あぁ…確かに昔からそうだったな…」
日本の大学へ来て、フランス語を通し続けたジョルジオは、ある意味立派だと感心する。
ウーラは日本の書物を読みたいが為に、必死で覚えた結果がこれである。
「日本の言葉が美しいとか何とか言って、覚えた言葉が口説き文句とは…呆れるな」
「君は真面目過ぎると思うよ?研究ばっかりで、彼女も居なかったじゃない?日本語は美しいけど、日本の女性はどれも一緒とか言ってたっけ?」
何年前の話しだ!
そう言い返すのも億劫で、ウーラは諦めた様に溜め息を吐く。
「でも…彼女へのプレゼントより、高額機材に投資しちゃう様な君が、結婚したいって言える様になったのは進歩だよねー。まぁ、ウチの大学の測定室の設備が良いのは君のお陰だけど」
「炭素14法にはロマンがあるんだ!!」
勢い良く立ち上がり、炭素14法に思いを馳せるウーラ。
だが、笑顔を絶やさず、教授はウーラに言い放った。
「ジョン君、小町ちゃんの事凄い気に入ってたみたいだったよ?考古学オタクの君に負けないって、結構意気込んでたけど?私に会いに来た理由も、有名な呉服屋の場所、訊きに来ただけなんだけどね」
ジョルジオは物で釣るつもりらしい。
珍しく焦っているウーラに、教授は助言を囁く。
「女の子って言ったら、やっぱり『アレ』よ?」
「…『アレ』?」
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