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小町が席へ戻ると、またウンザリな話しが再開された。
早く助けに来て~!
そう願う。
ここからの会話はフランス語につき、小町理解不能。
『あ…』
ジョルジオは嫌でも視界に入ってくる褐色肌の男に気付いた。
珍しくスーツを着ており、珍しく髪も整っている。
腕を組む女性が居て、ジョルジオは驚いて目を見開く。
何とも美しい女性だった。
煌びやかなモスグリーンのドレスを纏い、緩く巻いた髪はキラキラと流れる。
目はパッチリしており、長い睫毛をしばたかせ、ウーラと楽しく会話をしていた。
あの考古学オタクが見合いをした、と言っていたが、相手は小町ではなかったのか。
女の匂いすら感じさせないウーラだったが、彼は非常に『モテる』顔立ちをしていた。
オリエンタルな雰囲気と、どこか影のあるミステリアスな所が、世の女性を虜にするのである。
本人は全く興味が無いので、悉く断り続けていた。
甘い口説き文句も、笑顔すら知らなかった男が今、見た事もない笑顔で女性と楽しく腕を組んでいるのだ。
その女性は、ジョルジオの好みである。
ドンピシャリだ。
『…あ…ジョルジオじゃないか』
向こうもこちらに気付いて、話し掛けてくる。
『何だ。誰かと思ったら考古学オタクじゃないか。久しぶりだな。恋人と食事か?』
『…まぁ…な』
『ウーラさん、こちらはどなたかしら?』
隣の女性が訊ねるので、ジョルジオは満面の笑顔で挨拶をする。
『ジョルジオ・フォン・スケルツォと言います。いや…実にお美しい方ですね…』
『まぁ!ジョルジオ・フォン・スケルツォさんって、フランスで有名な方ね!お会い出来て光栄ですわ。私、猪鹿紅と申します』
フランス語も完璧。
そしてジョルジオを知っているとなると、日本の金持ちだろう。
『…お前…俺よりコイツの方が良さそうだな…』
不貞腐れたウーラが呟くと、紅は楽しそうに笑う。
『嫌だわ、嫉妬してるの?』
『…悪かったな…』
腹立たしい事この上ない。
何時も何時も、自分より上を行く男が、仏頂面で愛想も無い奴だなんて。
小町の存在も忘れ、ジョルジオは紅を視線で追った。
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