不思議です!

16/19
前へ
/92ページ
次へ
時刻は既に9時を回り、食事会は曖昧なまま終わってしまった。 良かったのか悪かったのか。 ホテルに戻ると、ウーラと紅はロビーで小町を待っていた。 まず、ウーラは小夜子に深く頭を下げる。 「申し訳ない!」 何故謝られるのか分からない小夜子は首を傾げた。 「私はウグドラ・クォルタプスと申します。挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」 「あぁ!」と、小夜子は声を上げた。 「レストランにいらした方ね?まさかウグドラさんとは思いませんでした」 「小町が困っていたので、彼女と二人、何とか出来ないかと…」 くどくどと説明するウーラを押しのけ、次に頭を下げたのは紅だった。 「本当…ごめんなさい!私…猪鹿紅と言います。長年に渡り大変失礼な事をしてしまいました…小町さんを勝手に…本当に申し訳ありません!」 「…そうね…連絡も取らせてくれなかったから…何時か告訴しようかと思ってたんだけど、小町から全て聞いたの。小町はもう気にしていないみたい。だからもう良いのよ?頭を上げて…」 この10年と云う月日は、小町や小夜子、紅が悩んだ時間でもあった。 上手く行かない苛立ちや、頭の片隅にあった不安に振り回された時間。 今、10年の蟠りがほどけていく。 「…小町…」 ウーラの声は優しい。 小町は何だか目頭が熱くなって、隠す様に鞄に顔を埋めた。 本当はウーラに頼りたかったけれど、小夜子も紅も居るこの場で、小町は我慢するしかなかった。 だが、ウーラの指先が髪に触れると、小町は安心して意味も無く頷く。 『良かったな』 テレパシーが伝わってくる。 少し心配そうに触れたから、小町はまた頷いた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1888人が本棚に入れています
本棚に追加