不思議です!

17/19
前へ
/92ページ
次へ
小町と紅は、近くのカフェへ向かった。 ウーラが小夜子と話しがしたいと申し出たからである。 ホテルの最上階にあるバーで、二人は夜景を眺めながらカクテルを飲んだ。 「…こんな時間に申し訳ない限りです」 「お話って、結婚の事でしょう?小町からもう耳にタコが出来る位、聞いてます」 それ程、小町はウーラについて良く話した。 あの孤島で過ごした1ヶ月、色々な思い出を語る小町の表情は輝いていた。 「あの子は…確かに私が産んだ子供です。ですが、育てたのはあの夫婦。私は只の『叔母さん』で居られるだけでも有り難いと思っています」 「…一緒に居たいと思わないのですか…?」 「あの子の人生です。私は縛る様な事はしたくないので。あの子が自由に生きられる手助けが出来ればと思っています」 輝く夜景の様な、夢見る様な瞳で、小町はウーラを語る。 小町の伸ばした手を取ったのは、紛れもなくウーラなのだから。 「…私の両親と会って貰えませんか?来月にはエジプトへ調査に行く予定なんですが…小町に見せてやりたいんです!あの神秘と不思議、世界の謎がどれだけ素晴らしいかを!」 と。言っておきながらウーラは後悔した。 お金や女、食事より世界の歴史を、謎を愛したウーラが、結婚に意欲を燃やした事等無かった。 中々上手く言えず、小夜子の返事を待つウーラ。 そして、小夜子は笑った。 「私、初めてお話を書いた時、まだ夢見がちな女だったの。お話の主人公は『小町』と言う淑やかだけど、内に熱情を持った女の子。小町は異国の男性と恋に落ちて駆け落ちするの。まだ見ぬ世界は不思議に満ちていて、小町は色々な事を学んで、やがて自分の道を切り開いて行く…まるで小町そのものよね。私は預言書を書いたつもりは無かったんだけど」 「…駆け落ち…」 「嫌だわ!だから預言書ではないのよ?只…貴方と居られたら、小町は幸せよね」 嬉しかった。 素直にそう思える。 小町と二人なら、どこまでも行ける気がした。 オーパーツである金ピカの『黄金ジェット』のモチーフが魚ではなく、本当に飛行機だったのなら…。 どこまでも二人で行ける。 そう、ウーラは思った。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1888人が本棚に入れています
本棚に追加