不思議です!

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「お話は終わったんですか?」 小町が帰って来ると、ウーラはやはりロビーで待っていた。 紅は先に屋敷へ帰って行ったし、小夜子は酔ったのか寝てしまったらしい。 時計は既に夜11時を過ぎていた。 「ウーラさんはホテルに戻らなくて良いんですか?」 「まだ良い。それより…ちょっと着いて来い」 え? 躊躇っていたら、腕を引かれた。 空に星は見えず、ネオンが少しづつ散り始めていた。 1時間前より人混みも閑散とし、二人は先を急ぐ。 タクシーに乗り、向かった先は美術館だった。 真っ暗な美術館は、青白い灯りを灯し、静かに眠っている。 「あの…ウーラさん…」 「特別に開けて貰った」 正面の入り口に警備員が居り、ウーラは身分証を出す。 「はい、教授から伺ってますよ」 そう言って、扉を開けてくれた。 気配の無い二人だけの美術館は、どこか不気味で、空気が重い。 明るくなった廊下の先に、大きなパネルがあった。 「…これは…」 「あぁ。日本に来てたんだな」 中へ入ると、写真パネルと歴史に纏わる書物、精密な模型も展示されている。 真ん中で、こじんまりとしているケースの中を覗く。 「これがオーパーツだ」 「…これ…何ですか?歯車みたい…」 歴史の欠片を見ても、小町にはピンと来ない。 古び、朽ち果てた車輪の断片を何故『オーパーツ』と言うんだろう。 「これはアンティキシラの歯車だ。自動回転式の天球儀…あそこに復元された物があるだろう?」 ウーラの指差した先に、金ピカに光る精巧な歯車が佇んでいた。 「古代ギリシャで、太陽系の位置を正確に示す事が出来た代物だ。様々な学者が作った、謂わば『古代のコンピューター』だな」 「…そんな昔に…こんな物が作れたんですか?」 「だから『場違いな加工品』って言うんだよ。凄いだろ?でもな、良く考えてみれば、昔の人が今の俺達人類より劣っていたと思えない。何故作れない?良く考えてみれば、可能だったりするんだ」
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