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大学の校内を歩く、ロリータと褐色の肌をしたスーツ姿の男性を、周りはジロジロと眺めている。
あぁ…珍しいんですね…分かります。
どうして大学なのか。
ここへ来る為にこの様な似合わない格好をするのか。
ウーラさんのこう云う所が謎…。
向かった先は何かの研究室らしい。
「教授!」
ウーラが声を掛けた女性は、白衣を纏い、年齢不詳を思わせる風貌をしていた。
小町を見つめてから、にっこりと微笑んだ。
「貴女が小町ちゃんね!私、長谷部彩と言います。貴女の義理の叔母さんね」
あぁ…確か小夜子さんの弟さんが結婚したって言ってたっけ?
「可愛い~。お姫様みたい!」
ど こ が ?
ウーラと同じ趣味を持つらしき女性は、聞く所によるとウーラの恩師らしい。
二人は小町そっち退けで、難しい会話を交わす。
研究がどうとか、遺跡がどうとか。
うーん…放置されてるみたい。
暇を持て余した小町は、周りをキョロキョロと見渡す。
機械、機械、機械である。
「あ、すまん小町。じゃあ行こうか」
「そうね。待たせたらいけないものね」
…?
何故か同伴する彩と共に、早速大学を後にするのだった。
「何処に行くんですか?」
タクシーの車内で訊ねると、「まぁまぁ」等とはぐらかされ、ウーラと彩に従うまま、都内で有名な料亭に到着した。
古風な佇まいの料亭に入ると、小町は彩に手を引かれ、ウーラとは別の部屋に案内される。
「あ…あの…」
「大丈夫!大丈夫!とにかくお着替えしましょう」
料亭の女将さんを呼び出し、小町は訳も分からぬまま服を脱がされてしまった。
と、そこに登場したのは、見覚えのある白い箱だった。
「…あれ?これウーラさんの部屋にあった…」
うん。間違いない。
あの箱だよね。
「開いてみて。彼が見立てた物だから」
彩に促され、あの白い箱を開くと…。
「…うわぁぁぁ…!」
淡いピンクの振り袖が、目の前で宝石の様に輝いている。
淡い色から裾に向かう濃い桃色。
散らばる桜の花は、まるで日本の春そのものだ。
「これ…ウーラさんが…?」
「帯もあるの。すっごく綺麗でしょう?ほら、鶯がポイントになってる」
桜を引き立たせる深いゴールドの帯に、流れる風と、羽ばたく鶯。
「綺麗だから選んだみたい。彼にしてみたら上出来だわ」
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