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きちんとした日本式のお見合いに、ウーラは些か苛々していた。
両親同士で楽しい英会話が繰り広げられているのを横目に、ウーラは溜め息を吐く。
紅は今頃ジョルジオに迫られているだろうし、契約書は既にこの手の内である。
紅やジョルジオの考えは解っているし、掌の上で二人を転がすのはお手の物だった。
とにかく、だ。
結婚と云う人生の通過点は、ウーラが想像していた以上に疲労が溜まる。
小町は遅いし、両親達は喧しいし…。
すると、襖の向こうから声が掛かる。
先に入って来たのは教授だった。
両親と軽く会話を交わし、ウーラに視線を移すとにっこり笑った。
「小町ちゃん」
しずしずと現れた小町に、両親達は感嘆の声を上げる。
ウーラは只、あんぐり口を開けて驚いた。
悩んだ時間、たったの10分。
似合うかなー…程度だった着物は、小町に良く似合っていた。
髪を結い、軽く化粧をした小町は、ゆっくりとお辞儀をして席に座る。
眼鏡は外され、島に居た小町を思い出す。
「…小町…」
「は…はい…」
「にっ…似合ってるな…」
「…有難う御座います…」
少し新鮮。
お互いに照れてしまい、俯く二人に両親達や教授はニヤニヤと笑う。
『本日は良いお天気で…』
そう切り出した教授。
豪華な食事に舌鼓を打ち、和やかなムードで両家の話し合いは続いた。
英語も分からない小町は、笑ってばかりで硬直している。
何だか可笑しくて、ウーラは笑いを堪えるのに必死だった。
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