身代わりです!

8/9

1888人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
………4時間後。 「分からん!!」 当たり前である。 「そうだ!生活に必要な何かを…」 ドレス邪魔だなぁ…これを取って…ビリビリっと…そんでもって髪を…。 「コンタクトで良かったかも…」 綺麗なドレスが小町の手によって簡素なワンピースになった。 コサージュのピンだけ取り外し、余った生地でワラジを作った。 「流石私…生きていけそうな予感」 呟き、小町は海に背を向け、ジャングルの中に入り込む。 勇ましく進んでみた。 …………1時間後。 「……な…何…これ…?」 草木を掻き分けた先から、途端に視界が開けた。 …畑?…麦?…田んぼ? …馬?…牛?……水車ぁ!? まるで異国の長閑な田園地帯だ。 ゆっくりとした時間が流れた、老後生活に打って付けの場所である。 真ん中にポツンと煉瓦で建てた小さな家があった。 事もあろうか、人影が藁を抱えている。 小町は夢中で走った。 凄まじい跳躍で駆け抜ける。 「す!い!ま!せぇぇぇぇん!!」 勢い余ったらしい。 積み上げた藁に激突してしまった。 「ぶぁぁぁぁっ!!」 暫し、静か過ぎる時間が流れた。 藁の隙間から、誰かがこちらを覗いている。 「…も…申し訳ありません…」 謝ってみたが返事はない。 目を細めて良く見ると、褐色の肌をした男性が不機嫌そうに小町を睨んでいた。 「おーぅ!外人さーんでーすかー! …ヘルプ ミィィィィ!!」 必死なんですよ。 生きる為に必要じゃないですか。 人間ってそんなモンですって。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1888人が本棚に入れています
本棚に追加