烙印

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「黙れ、もうお前に口出しの余地はない! 全ての罪はお前にある、もう確定したことだ。咎人は咎人らしく、素直に十字架を背負って生きていくんだな」  わたしを指差しながら、『あいつ』は言った。彼から合図がされた訳でもなく、腕を押さえていた部下たちはあっさりとわたしを解放した。  わたしはそれを好機とばかりに乾燥した矮躯を精一杯に動かし、開けられたままの入口から廊下へと脱出した。やにわに扉を閉め、挿しっぱなしの鍵で錠をし、鍵を奪われないように懐へと仕舞った。  結果、逆に牢屋に閉じ込められる形となってしまった彼らは、一連の出来事を平然と見ており、やがて『あいつ』が噴き出した。「今更何をやっても無駄な悪あがきだと言うのに。呆れてしまった!」 「わたしはちゃんと家族を愛していました! 確かに、娘に自分を重ねて無理やり軌道を修正したりもしましたよ? でもそれも、全てはあの子の為だったんです! あんな小さな子に舵を握らせたら、どこだか意味の分からないところへと迷い込んでしまって、いずれ沈没してしまうのがオチです。いとけないながらも知識を色々と得たところで、相手はあの大海です。叶う訳がないんです。悟ったように感じたのは、所詮、『感じただけ』のことなんです。そんな先行きが分かっている状況にも拘わらず、手助けをせずにただ見殺しにするなんて、それこそが咎と言うものじゃないですか! わたしは間違ったことなどしていません!」
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