烙印

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 ここから出られない……。わたしは半ば理解していながらもいざ突きつけられた現実に目眩を起こし、鉄格子に掴まったままずるずるとその場に座り込んだ。 「枯れてしまったことを認めれば、ここから出してもらえるの?」わたしは消え入りそうな声で尋ねた。 「勿論だとも!」『あいつ』は陽気に答えた。  わたしは一刻も早くこの牢獄から出たい一心で、「認めるわ、わたしは枯れてしまった!」と叫んだ。枯れた声を必死に絞り出したその様は、傍観者の目にはどう映るだろうか。きっとそれは、廬生(ろせい)の夢だったに違いない。 『あいつ』は先程まで顔に浮かべていた嗤笑をどこかへとやり、真摯な顔でわたしを見下ろす。「しかし、それだけで済まされると思ったら大間違いだ。お前には幾つもの咎がある。忘れたとは言わせないぞ」 「良いわ。どんな咎だろうと構わない。全て認めてやる! だから、早くここから出して!」 「本当に、全てを認めるんだな? 自棄などではないな?」丁寧に一文字一文字ゆっくりと『あいつ』は発音した。既に最愛なる人達との再会ばかりが頭の中にあったわたしには、そんなことなどどうでも良かった。 「はい、認めます! 嘘偽りなど微塵もありません! 神に誓います!」  そうか、と『あいつ』は顎髭を撫でながら、哄笑した。口元の歪み方が尋常じゃなかった。まるで最初から、こうなるのを待ち望んでいたかのようだった。
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