消失

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横を見ると、そこには妻の姿はなかった。 布団は押入れに入れてあり、浴衣は綺麗に畳まれていた。 まるで、妻は始めからいなかったかのように。 ごめんなさい。先に行くわ。 そう囁いた妻の声が、僕の耳に深く残っていた。 僕は妻を探した。 胸の内側から突き出した感情が、そのまま妻を呼ぶ声になっていた。 僕は何度も名前を呼んだ。 しかし、妻はどこにもいなかった。
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