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と、影がある角を曲がったその時。
その鬼ごっこは終わりを迎えた。
その角を曲がった先には、一つの部屋。
次の角はなく、行き止まり。
しかし、影はどこにもいなかった。
「どこ行ったんだ‥」
息を切らしながら歩いてきた透希は、扉に行き着くと、ずるずると床に座り込んでしまった。
その部屋の扉は一際大きく、派手な装飾が施されている。
天井にはめ込まれた磨り硝子から、その扉を照らすように淡い光が差し込んでいた。
「お疲れのご様子ですな」
顔を上げると、卯咲執事が立っていた。
相変わらず背筋をぴんと伸ばしながら、扉を見つめている。
光に白髪が反射して、きらきらと光る。
「よほどお会いになりたかったと見える」
ほっほっほ。
卯咲老人は声を上げて楽しそうに笑った。
「ここは‥?」
透希は立ち上がり、扉を眺めた。
他とは明らかに違う部屋。
その装飾もさることながら――扉には、大きな錠がかかっていた。
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