世界が全ての色を喪った時

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酷く心がざわついていた。 日々は暗く、単調だった。 毎日毎日、ただ同じ歯車の中で、ひたすら刻を刻んでいるだけだ。 明るくなれば目覚め、活動を開始する。 五月蝿く喚く時計を止め、乱れたベッドから這い出し、シャワーを浴びる。 窓の外から聞こえる小学校のアナウンスが、酷く耳障り。 コンタクトを入れ、歯を磨く。 リビングに行けば朝ご飯。 冷めたパンとハム、昨日の残りの味噌汁にジュースが添えられている。 見慣れすぎた光景だ。 朝食を食べ終わっても、する事はない。 人間がいなくなり広くなったベッドを、ここぞとばかりに占領している猫と暫し戯れる。 隣ではメールマガジンの着信を伝える携帯電話が五月蝿く鳴っていた。 酷く、心が、ざわついていた。
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