日常が非日常へと変わる瞬間

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部屋の、大きな木の扉のノブを回してみるが、鍵がかかっているのか、扉は開かなかった。 ガチャガチャと音だけが広い部屋に虚しく響く。 「なんなんだ、一体‥」 透希はわけが分からなかった。 いつもの日常を過ごしていた筈だ。 いつも通り目覚め、シャワーを浴び、暇を持て余して、テレビに向かう。 猫は眠り、空は晴れ、子供は元気に遊んでいた。 気付いたらここにいた。 気が付いたら閉じ込められていた。 透希はわけが分からなかった。 立ちすくんだまま、途方に暮れてしまった彼は、諦めてドアノブから手を離した。 いくらガチャガチャやっていてもどうにかなる訳ではない。 「とは言っても‥」 どうしようもないな。 流れてくる風を肌に感じながら、透希は椅子に腰掛けた。 柔らかな風と心地良い香りが、透希の心を落ち着かせる。 椅子の背に体を預け、透希は心地良さに目を閉じた。
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