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「私は卯咲、この城の執事を務めさせて頂いております」
品の良いティーセットを銀のトレイに載せ、卯咲執事は"お茶"の支度を始めた。
透希と自分の二人分、真っ白なテーブルクロスの上に並べ、真ん中に砂糖壷を置く。
「うさぎ、さん‥少し、聞いても良いですか」
「何なりと」
相変わらず微笑みながら卯咲執事はティーポットを揺らす。
物腰は柔らかだがどこか触れにくいこの老人に、透希は恐る恐る疑問をぶつけた。
「ここはどこですか?なんで僕はこんなところに、いつの間に‥?」
「随分と沢山お聞きになられますな」
「あ、す、すみません」
「いえいえ、構わないのですよ、ほっほっほ」
老人はカップに紅茶を注ぎながら笑った。
アールグレイの良い香りが湯気と共に立ち上る。
「ここはとある城で御座います。あなたは選ばれたのです。ある御方のために」
「ある御方‥?」
「それは後ほどご紹介致しましょう。あなたは必ず時を変える。そのためにここに居るのです」
時を、変える‥?
「全ては必然で御座いますよ、透希様。今はまだ‥分からないけれども。いつか、お分かりになる時が来る」
老人は静かにティーカップを差し出した。
「さぁ、どうぞ。お召し上がり下さい。ここで飲むお茶はまた格別で御座いますよ」
卯咲執事は相変わらず、深い微笑みを湛えていた。
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