王子様と王子様の薔薇の花

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緑のカーテンが幾重にも続く中を白い子馬が歩く。 上に乗るのは、黒に朱の羽帽子で顔をスッポリと覆われた王子様。 苔むす緑の枝垂れ樹木がその殆どを隠す田舎道。 真っ青な空と小鳥のさえずりが、王子様の身体を優しく撫でて心を晴やかにしてくれます。 「ねぇ 朱金の騎士はこっちへ来たことは?」 呼ばれて王子様の隣へ並んだ朱金の騎士。 彼の黒馬は王子様の白馬と倍ほども違う、がっしりとした大きな闘馬。 並ぶと親子の様に見える微笑ましいものでした。 「私は城の主力とされてますから、何時も置いてゆかれる立場にございます。 銀の騎士は上手く逃げ出して、こちらへは度々と聞いてますがね」 渋い顔にユーモアを宿らせると、 ‐気の良いおじさん‐に見える彼が、王子様のお気に入りです。 稽古の厳しい顔と、こんなひとときのさりげない一言が、王子様の‐憧れる心‐を揺さ振ります。 「ぼくと来れて良かったね ヒミツの場所を朱金だけに教えてあげよう」 「光栄にございます王子」 ふふっ‥ 王子様は益々、晴やかな気持ちに心が弾みました。     
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