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「わ‥あぁ!
凄い!ぼくの薔薇だ!」
びっくりとして声を漏らす王子様に、先の王様は悪戯っぽく笑いました。
平坦な芝生と噴水だけだった中庭が、王子様の薔薇の垣根で迷路みたいになってました。
美しい薔薇はどれも、天に向かって真っ直ぐに伸びて、手入れしなくとも一輪挿しが出来そうです
それが無数に咲いているのだから、王子様が驚くのも無理はありません
「余程強い品種なんだろう
庭師は形を整えるだけで喜んでおるよ
他の、私や伯父様の薔薇は温室に入れて、手入れしてやらんと枯れてしまう
せっかく王子の母様に戴いたもの。
毎日手入れに余念が尽きぬわ」
先の王様はワイングラスのように王子様の薔薇を手に取り、薫りを楽しみました。
慈しむ瞳は深いシワに隠されて、好々爺そのものです
王子様は御祖父様の横で一緒に薫りを楽しみました。
父王様のケンゴのように、香りが苦手じゃなくて良かったねと、二人は笑いました
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