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「ゆっくり吸うんだよ。で、ある程度吸ったら吐くの」
まだ顔をにやけさせながら、まどかが俺に説明する。
「へいへい」
気を落ち着けて、もう一度。
スーー、スパー
うーん……
頭がくらくらしてきた。
でも、なんか気持ちいいかも。
「どう?どんな感じ?」
「クラクラするけど気持ちいい感じ?」
「わかるわかる。初めてってそんな感じ」
2人ともまったりしてきた。
話が尽きそう……
口下手な自分が憎い。
何か聞いてみよう。
あ、そうだ。
「気になったんだけど、なんでタバコ一本だけ逆にしたんだ?」
じっと見ていて気になった事。
そんな事しか聞けないけど……
「おまじない。」
「は?」
「タバコを開けた時、一本だけ逆さにして、一番最後に逆さにしたタバコを吸うと願いが叶うんだって」
「へぇ~、願い叶った事あるのか?」
「うん、さっき」
「は?」
うん。は、わかる。
さっきって何だ?
何かあったか?
「将太と話しできた」
「あ……」
「……」
「……」
何も言葉が出ない。
そういう風に言われるのは嬉しいけど。
俺もそう思ってた。
なんて、軽すぎて言えない。
どうしよう……
「なぁんてね、冗談。アハ」
「え?」
「冗談冗談。いつも宝くじ当たらないかなぁとか思ってるの」
「そ、そうなのか?」
「うん。宝くじ買ったことないけど」
「うぉい!」
「あはははは」
本当に冗談だったかはわからない。
ただ、まどかの一言で和んだのは確かだった。
それがスゴく健気に見えて
それがスゴく嬉しくて
もう一回まどかを抱きしめた。
「将太、おかえり」
「ただいま、まどか」
俺は、この言葉でやっと春菜町に帰ってこれた気がした。
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