序壱

2/7
前へ
/41ページ
次へ
 我々の知らない時代、見る事もなく、触れる事もない物語をはじめよう。  --新星歴130年5月8日--  惑星ラスビス、人類が32番目に移住した惑星。 地球と同じく青く美しい惑星だが、すでに現在の地球と同程度まで開発されていた。  そのラスビスのとある田舎町で戦闘が行われていた。  勿論、現代のように歩兵や戦車、戦闘機を用いた戦闘もあるが、この時代では戦略を大幅に変える新たな兵器、タクティカル・ライドが登場していた。 「いいぞ、このまま押し切れ!」  野戦服に身を包んだ恰幅のいい指揮官が、指揮車両から身を乗り出して怒鳴り飛ばす。  小粋な口髭を生やした指揮官の眼前では、戦車が横一列に並んで編隊を組み、敵を押し出そうとしている。  その戦車の中には、人間の上半身をキャタピラに合体させたような特異なものが数台混じっていた。 「いけぇーっ!押しつぶせぇー!」  指揮官がこれでもかというぐらい怒鳴り散らす。こめかみには青筋が浮かんでいて、今にも血管が切れてしまいそうだ。  指揮官の怒号に合わせるように、敵の一体が爆砕した。 「フハハハーッ!ヴァカめーっ!」  本隊がいないスキを突いたのだろうが、そうはいかん。  敵が奇襲して来たと聞いた時は、焦ったが、TRがたったの五体ぽっちで奇襲とはナメたものだ。 「人型兵器かなんだかしらんが、このグラードの前では赤子同然よぉ!」  一方、戦車隊に一斉放火を浴びているTR部隊は、ジリジリと後退を余儀なくされていた。  航空輸送隊の空輸ルート確保のため、田舎町にある敵基地の高射砲を破壊する任務を帯びて来たのはいいが、まさかこれ程までに押されるとは思わなかった。  それに、別方面から攻め込む部隊が遅れていて、状況は最悪だ。 「本隊はガトルスに出てるんじゃないのか!?」  部隊長が怒鳴る。 「そのハズです、愚痴なら情報部…うあっ!?」  部下の人型兵器、TR-03ライオードが被弾した。 初の完全人型モデルの新型量産型TRなのだが、新型と言えど、流石に五体(しかも一機は破壊されている)では戦車の大部隊にはかなわないようだ。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加