序壱

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「エクター、大丈夫か!」 「左腕が吹っ飛びましたが、まだいけます」  その時、隊長機付近に着弾があった。 「クソッ、貧乏くじひいちまった!」  部隊長、ラズナ中尉が思わず怒鳴る。 当初、敵基地が田舎とはいえ市街地にあったので、街を盾にして戦えば、敵の戦車隊も砲撃できまいと小汚ない作戦を思い付いたのだが、敵の半人型戦車「フェンク」のおかげで街に入る前にこの有様だ。 「馬鹿戦車のクセしやがって!」  そのフェンクからの砲弾が雨霰と降り注ぐ。 TRの前身ともいえるフェンクは、索敵能力と長距離砲撃能力に非常に優れており、加えてTRが標準装備する70ミリ口径の銃器では貫通できない非常に強固な装甲と優秀な近接防御機能を有する要塞のような戦車である。弱点と言えば、移動速度が非常に低いところだろうか。  しかしながら、その長所から今回のような防衛線には重宝される。 「クソッ!」  戦車軍団の砲撃が止まらない、勘弁してほしい。 その時、ラズナ達の通信機から嬉しい声が聞こえた。 「こちら第16独立隊、遅くなった」  神、降臨…! これで高射砲も破壊できるし、いけ好かない馬鹿戦車にも仕返しができる。 「援軍…一機です…」 「何ィィーッ!?」  ラズナは、愕然とした。 たった一機か、現状と大して変わらないではないか。 「これより援護する」  そのたった一機の援軍は、STR-04試作型ライドールであった。 ライオードより装甲を削り、脚部の高速走行用ブーストローラーの出力が上げられている。簡単に言えば、三倍でないにしろ、動きが早いのだ。  援軍の報を聞いたグラードは、唾を飛ばしまくりながら怒鳴った。 「フハハハーーッ!一機だけとは馬鹿かーっ!」  一呼吸置いて。 「破砕せい!」   「来たか」  ライドールのパイロット、シェイド・K・ソリュード曹長は冷静に戦況を分析した。
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