序壱

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 グラードの怒鳴り声に合わせて、戦車隊がシェイドやラズナ隊に砲撃を始める。  あっさりと前言撤回、市街地を巻き込むことはお構いなしだ。 「おい、あんた、早くトンズラこくぜ!」  ラズナ隊は早々に後退行動に移った。 だが、街の中心地にいる上にヴィシュの一番の怒りの対象であるシェイド機は、グラードから迷惑な馳走をうけていた。 「先に行ってくれ」  シェイドの言葉にラズナは頷き、彼らの隊は申し訳程度にシェイドを援護しながら後退して行く。 「逃がすなぁぁーっ、撃てぇぇぇぇっ!」  気が狂ったようにグラードが怒鳴る、というより、狂っているのかもしれない。  シェイドは、レーダー機能と機体のAIを最大限に酷使して突破口を探す。 だが、不幸な事に、フェンクを含んだ戦車隊が検出された脱出ルートに立ちはだかっていた。  他の道より、一番敵が手薄ではあるが、市街地のような狭い場所でフェンクと勝負するのは厳しい。 「やれやれ…」  シェイドは溜め息を吐いた。 ライドールは、時速170キロ近い速度でフェンクのいる路地に突っ込んだ。 素早く取り巻きの戦車を倒すと、フェンクにサブマシンガンを見舞った。  やはり、重装甲には効果が薄い。  フェンクが榴弾を発射、逃げ道は上のみ、下手に跳躍してはいい的になる。 ならば--。  ライドールは、左腕で榴弾を受けた。 言うまでも無く爆発する。誰もがライドールの撃破を信じた。 「ばぁーーかめぇぇ!!」  グラードが馬鹿笑いする。これでやつも木っ端みじんだ。  だが、グラードの予想に反し、爆煙に紛れてライドールが現れた。 左腕が千切れ、左半身に損傷が目立つ。  生きていた敵を見るや、フェンクが一斉に機銃を唸らせる。 ライドールは、装甲をはぎ取られていくが、全く意に介していない様子で前進し、フェンクに体当たりを敢行した。  更にライドールの生き残った右手首から内蔵式のナイフが飛び出し、フェンクの脇腹目掛けて刃を突き立てた。
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