297人が本棚に入れています
本棚に追加
寮に着いた。
寮の建物も呆れるほどの立派な建物だった。
私は、寮監督の先生に挨拶や手続きを終えた後、この女の子と大広間に向かった。
私たちは、大きな窓の横のテーブルに座った。
「自己紹介が遅れて、失礼だったわね。わたくし、橘聖良(たちばな せいら)と申します。本名は東宮聖良。これから仲良くしてくださる?」
「もちろん!よろしくね。」
そう言うと、聖良は嬉しそうに笑った。
「夏名さんは、どうしてこの学園に?」
「…東京に引っ越してきて、親に勧められてこの学園の編入試験受けたんだけど…」
「それで合格されたのね。さすがですわ!」
本当のことを言いたかったが、訳有り合格した理由も分からなかったので、言えず終いだった。
「聖良ちゃんは、もうこの学園には慣れてるの?」
「そうね。わたくしは中等部からこの学園にいるから、ほとんどのことは理解していますわ。」
「そうなんだ。」
「ええ。今の旦那様とも、もう4年目になりますわね。」
「担当職員って変わらないんだ…。」
私がぽつんと呟くと、聖良は声を張り上げた。
「当たり前ですわよ!夫婦とは、いかなる時も共にいるものよ。担当が変わるということは、再婚と同じことですわ。」
「さ、再婚!?」
「ええ。旦那様が変わるのですから。」
…この学園はやっぱり変だ。
改めてそう感じた。
「…じゃあ、もし担当職員を変えたらどうなるの?」
「当然、成績は最下位になるでしょうね。運が悪ければ留年の可能性もありますわ。」
「へぇ~…。」
「でも、夏名さんには問題ないことですわ。だって、あんな素敵な旦那様なんですもの。」
「……。」
私は、この学園を卒業できるのか心底不安になった。
.
最初のコメントを投稿しよう!