霧生古書堂

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静まりかえった部屋で、彼は読みかけの雑誌をポフンと閉じた。 しばらく本を閉じた姿勢で固まっていたが、いきなり雑誌を足元に勢いよく放ると、ソファーに横になる。    言われなくてもわかってる………… イライラと不安のような感情が喉の奥まで込み上げてきて、彼は勢いよくソファーから跳ね起きた。    落ち着かない。 高校を卒業して翌年、流れとしか言いようのない形で就職した。 しかしこれといってやりたかった仕事だとか、そういった話しではない。 三ヶ月で嫌気がさし、辞めた。それが七月頭の話し。 そして本日、まだ暑さが残る残暑長引く九月の頭、ド平日。 この間、彼は何も仕事をしていない。 いわゆるニートであろうか。 「あぁぁあああ、クソ!」 痒くもないのに頭をガリガリ掻きむしり、彼はぶつけどころのない苛立ちに一人声を上げた。 何かしなければいけない。それは分かっている。 しかしどうにも気力が沸かない。 「……………昼飯…………買いに行くか」 疲れたのか気が晴れたのか。 とにかく彼はひとつ大きくため息をつくと、近所のファーストフード店へ出向く事にした。
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