霧生古書堂

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……………またT字。 さすがに少々方向感覚がわからなくなってきた。  これで分かれ道は五度目だろうか。 (マヅイとこ入り混んだか………) ため息混じりに、足を止める。 今から引き返す………か。 しかし、来た道を戻れる自信もない。 このまま勘で進むかどうかを悩んでいた時、ふと、近くの店が目に留まった。   『霧生古書堂』 心臓が、ゆっくり、トクン。と脈うつのがわかる。 「………マジでか。」 さすがになんだか気味が悪い。ただでさえ変な求人出してた店なのに。だ。 店構えは……なんというか、『いい雰囲気』と『珍妙』が見事なコラボレーション。 他の店にあったように、店先にランプがかざしてあり…………古い日本家屋をこじんまりとさせたような店構えの軒先には、どこから外されて来たのか古びた水車の輪がデンと置かれ、その他に古びた木のベンチやら…………どこぞのケーキ屋の店先で見たことのある、舌をペロって出した女の子の人形。 その女の子の人形の首が、風でカタカタと揺れた。
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