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白いYシャツに腕を通し、紺色のズボンを履いてネクタイを絞めると最後にブレザーを羽織る。
歯磨きをして、昨夜用意しておいた鞄を引っ掴むと玄関に向かって駆け出した。
「っと。忘れてた、忘れてた」
しかし、靴をはいていざゆかんとしたところで史翔は思い出したかのように慌てて引き返すと和室にへと向かう。
6畳程の畳の部屋に置かれている仏壇。
そこには一人の男性と女性が笑い合う写真と位牌が飾られていて、史翔はその仏壇の前で両手をあわせた。
写真の正体は今から10年前、交通事故の際に史翔を庇い死んでしまった両親である。
7歳という若さで両親を亡くしてしまった史翔は父親の両親に引き取られることとなり、その後は家事全般から祖父が開いている剣術を習っていた。
両親を亡くして余裕がなかった史翔は厳しくも優しい二人により、悲しみを幾らか紛らわしてもらいなんとか立ち直ることができたのだ。
高校生になってからは元の家に戻って史翔は一人暮しを続けている。
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