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「行ってきます。父さん、母さん」
線香をあげてから史翔は今度こそ家から飛び出した。
「畜生……、なんとか間に合うか…?」
高校までは凡(おおよ)そ歩いて25分程度。
対して史翔が家を出る時に見た時間は8:11。
「全力で走ってギリギリか!?」
猶予は約13分。
ちなみに史翔がどうしてこうも急いでるかと言うと奨学金で高校に通ってるからである。
本当は祖父が教育費をだすと言っていたのだが中学を行かせてもらったため史翔が遠慮したのだ。
閑話休題
「はっ……はっ……はっ……!」
リズミカルな呼吸を繰り返しながら疾走する史翔。
剣術を習ってるため人一倍体力がある史翔はようやく学校近くまでやってきた。
(まだ予鈴はなってない!間に合った)
そして最後の曲がり角を曲がった瞬間―――
世界が突如として色を失った。
「はぁ!?」
もちろん史翔は戸惑い、身体に止めて辺りを見回すも灰色の世界に変化は訪れない。
「なんだよ……、なんなんだよこれは!?」
人の気配は一切せず、まるで自分が世界から隔離されたかのような感覚。
史翔が瞠目しながら叫ぶが誰も何も反応を返さない。
いや――
『パァァアッ』
史翔の足元に突然として出現した何か陣のようなものだけが返事を返すように反応した。
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