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おたけびの方を見ると森の奥、その先から巨大な影が俺の視界に入ってきた。
「……あぅ、うっ」
身体が竦む。先程のパニックに陥りかけたこともあってか恐怖はさらに助長して俺の動きを妨げる。
逃げることもできず、ましては反撃することなどできやしない。
重い足跡を響かせ、ついに巨大な影の全貌が明らかとなった。
『ガァァァアアアァアアアッ!!』
背丈は2メートルを裕に越え、全長だと3メートルは行くであろう巨体。
鋭き牙と爪を生やしたソイツはトカゲのような顔で二本足でしっかり大地を踏みしめる怪物だった。
「………ひっ!?」
喉が引き吊る。ガクガクと足が震えて視界が涙で滲んだ。
怪物はそんな俺を見下ろすと、右腕を横へと薙ぎ払った。
「うわぁぁぁああ!?」
恐怖がついに臨界点を越え、俺の膝から力が抜ける。
しかし、今回はそれが幸をさしその攻撃を躱すことに成功した。
だが、それだけだった。
「がぁぁぁあ!?」
突如として腹部を襲った激痛とともに浮遊感、そして背中を打ち付けた強い衝撃。
ただでさえ錯乱していた思考がさらに真っ白になるまで吹き飛ばされた俺が唯一確認できたのは、衝撃の正体が怪物の尻尾ということだけだった。
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