44人が本棚に入れています
本棚に追加
「―――行くぞ、鈍間。」
そう言って、第一歩を踏み出す。
――そう認識した次の瞬間、七夜の姿はもう既に無かった。
「!!! ……後ろッ?!」
「遅い!!!」
秋葉が振り向き様に咄嗟に腕を盾にした頃には、七夜は六兎のモーションに入っていた。
―――普通、常人が最速を得るには数歩を必要とするが、七夜一族の走術は一歩目で最速に持ち込む事が出来る。
静止していたモノが突然高速で動き始めるのだ、これ以上の奇襲は他に無いだろう。
「ぐ…っ…!!」
腕の一点に、それも一瞬の内に六発の蹴りを叩き込まれ、秋葉の身体が吹き飛ぶ。
「漸く静かに成ったか…。
やれやれ、こんな妹を持って大変だよな…アイツも。」
腕が痺れ、突っ伏したまま立ち上がる事の出来ない秋葉に近付きながら呟く。
「秋葉、人の話を良く聞いてから行動した方が良い。兄からの忠告、さ。」
次にそう続け、更に真実を話す。
「俺が此処に来たのは、志貴ともう一匹を雪合戦に誘う為だ。
だから、"お遊び"と言っただろう???」
そう告げられた秋葉の表情は、険しい物からキョトンとした物へと変わった。
最初のコメントを投稿しよう!