白雪姫の母

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 そして決行の日。 お妃様は黒い頭巾をかぶり、顔を隠して出かけていきました。 白雪姫に怖い思いをさせないように薬で眠らせ、その間に町へと運ぶためです。 そしてもう一つ。 二度と会えない娘の顔を、最後に一度だけ見ておきたかったからです。  丁寧に編まれた麻のカゴには、みずみずしい林檎が入っています。 その全てには、眠り薬がしみ込んでいます。 「もしもし、誰かおらんかね」 お妃様はいつもより少し低い声で、小屋の戸を叩きました。 中には白雪姫しかいません。
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