白雪姫の母

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  「もしもし、誰かおらんかね」   「はぁい」   カナリヤのような声と共に、戸が開きました。 中からは、雪のように白い肌、絹のようになめらかな黒髪の少女が出てきました。   「おやまあ、可愛らしいお嬢さんだこと」 褒められた白雪姫は、嬉しそうな顔でにっこりと笑いました。 お妃様は、俯いて小さく震えています。   「なんの御用ですか?」   「林檎を売って歩いているのじゃが、可愛らしいお嬢さんには、どれ、一つ。プレゼントをしてあげようね。誰にもナイショだよ。今のうちに一人で食べておしまいなさい」   お妃様は、カゴの中でも一番赤い色をした林檎を取り出して、白雪姫に渡しました。   「ありがとう、おばあさん」   疑う事を知らない白雪姫は、丸くてみずみずしい林檎を一口ほおばりました。
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