392人が本棚に入れています
本棚に追加
/823ページ
「そうなの。クラツキ博士は、何か物凄い研究を行っていたらしいわ。それもEOTI機関を抜けなきゃならない程の。でもクラツキ博士が死んで、施設も資材も全部吹き飛んぢゃったから、その研究が何だったのかは神の見ず知らずって訳になっちゃったんだけど」
「神のみぞ知る、だ。それにクラツキ博士の研究が何であれ、俺達には関係ないだろ。何も厄介な事ではないぞ」
「厄介なのはその後よ。シラカワ博士が言ってたクラツキ博士の御令嬢、一人娘のキキョウ・クラツキって言うんだけど、中学を卒業してからクラツキ博士の研究所に近い海外の高校に進学して、父親のクラツキ博士と一緒に暮らしてたそうよ。そして爆発事故の際に、キキョウ・クラツキも死亡してるわ」
「なに、死亡してるだと?じゃあシュウ・シラカワの言ってたクラツキ博士の御令嬢、キキョウ・クラツキは……」
「4年前から、とっくに故人だった。不可解な話になったでしょ」
「……ああ。確かに厄介だな、これは」
キョウスケは資料を見つめながらシュウ・シラカワの言った事を思い出した。
『私はただ、クラツキ博士の御令嬢を死なせる訳にはいかないと思っただけですよ』
あの言葉に嘘は無いだろう。だがキキョウ・クラツキはもう死んでいる。ならばシュウ・シラカワの言うクラツキ博士の御令嬢とは、いったい誰の事なのか?
「失礼します。エクセレン少尉はおりますか?」
キョウスケが考え込んでいると、今度は別の若い青年兵が部屋に入ってきた。
「ん?エクセレン少尉は私だけど、どうかしたの、若いお兄さん?」
「はっ、エクセレン少尉の忘れ物らしき物が資料館にありましたので、届けに来ました」
「え、ええっ!それ本当!?」
「はっ、こちらがその物品であります」
その青年兵から渡されたのはエクセレンが資料館で調べていたクラツキ博士に関する資料の一部だった。
最初のコメントを投稿しよう!