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 双子の門番を抜けると、目の前には先程のものより一回り小さな門、審門が待っている。正門と草花のアーチで繋がったそれ。  門番により承認された者は、この門を通っても何も起こらない。  例えば不埒な盗っ人が、双子を振り切り審門までやってきたとする。門の向こうに広がるのは学園の校舎。盗っ人は後ろから追いかけてくる門番を気にしながら、審門を潜り抜け――ようとした途端。  門は壁になる。  比喩ではなく。今の今まで開かれていた門が、その者にだけ突如ただの壁になるのだ。勿論、承認を受けた者が同時に入れっても、受けた者だけが通れる壁になる。  その壁は破壊しようとして出来るものではない。それ以前に正門と審門の距離は長くないので、なんらかの行動をする前に双子によって大体取り押さえられる。  ちなみに、この門がそういった反応を示したと同時に、正門は勝手に閉まる仕組みだ。正門と審門の間に閉じ込められる盗っ人。まさに袋の鼠。  “門番”なのに双子が門の中に居るのは、そういった理由である。  ディーテリヒは多くの生徒と共に審門を潜り抜けながら、自身の少し伸び始めた襟足を掻いた。黒い髪が、日の光を受け艶めいている。 「世界のパズル集め、か」  独り言にしてはやや大きかったが、周りの生徒は誰一人として彼を気にしない。
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