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帰路へとつく一向の足取りは、鉛のように重かった。
「…ファミレスにでも、行くか…。」
と、八尋。
「……八尋。」
このまま、各自家に帰っても、きっと一人で考え込んでしまうだけ。
どっちみち、眠ることなんて出来ない。 それだったら…みんなでこれからの事を話し合おう。
「そうだね…。みんな、昨日から何も食べてないし…。ご飯、食べに行こうか。」
八尋の気持ちを悟った海里。
何時も部活の打ち上げ時に来るファミレスに立ち寄る一向。
空気は、とてつもなく重い。
いつもは毒舌を吐いているバイト店員の紅蘭も、いつもと違う八尋達の様子に首を傾げた。
「……取りあえず…なんか頼もうやっ💦お腹も、減っとるし…」
「うん…じゃ紅蘭ちゃん、サラダ一つとドリンクバーみんなの分、お願い。」
「……かしこまりましたアル…。」
心配そうな紅蘭。
「心配すんな」と、八尋が笑ってみせるが。無理して笑顔を作っているのが嫌でも解った。
「……ついでに、全員にパフェもつけといてやるヨ…。」
「有り難う。紅蘭…ごめんな…。」
厨房へ向かう紅蘭。再び、沈黙。
しばらくして、美桜が喋り出した。
「パフェ…あいつなら3分もありゃ全員分食えるな…」
「美桜…そうだなっあいつならパフェ食った上にさらにケーキワンホール食えるな(笑)」
「どんなバケモンだよ矢的💧」
「昔から食欲だけはすごかったもんねぇ~(笑)」
束の間の、笑顔。
「………。」
「俺さぁ…。部活以外でも、よく二人でここに来たりとかしてたんだ。いつも丁度ここの席で。
あいつさぁ…ほっといたら4時間くらい一人で食ってるんやぞ(笑)
俺が食べ過ぎんなよって言っても、
「私は腹筋してるから平気ぃー」って…。
で、ケーキワンホールごと頼んで、半分俺にやるっつって。 んな食えるわけないやろっつったら、「じゃあ、私が全部食べるぅー」ってさ…。
結局全部食ってんのあいつ…」
「美桜……。」
「……そういうのも、忘れたのかな。ここで飯食った記憶も、うっとーしーくらい「みー君」「みー君」ってくっついてた記憶も、
俺と付き合ってたって記憶も、
俺のこと、好きだった記憶も……。
全部、無くなったんかなぁ………。」
美桜が呟く。その声は、鼻声だった。
「美桜……。」
皆、かける言葉が、見つからなかった。
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