禁忌の伝説

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コツッ、コツッ、コツッ、 革靴の低い音が、電灯の僅かに灯る暗い廊下に響く。今宵の廊下はとても静かだ。 静かな理由、それは一重にこの空気の重さからなるに違いない。 ここ病院の廊下。そしてそこが静かな理由となればただ一つ、誰かの命が失われた時でしかない。 やがて音は扉の前でピタリと止んだ。 この先にいるのは恐らく深い悲しみにくれる遺族であろう。すすり泣くような悲壮に満ちた声が扉越しにも伝わる。--相当に悲しいのだろう。 だが、扉の前の靴の主人はためらいなく扉を開いた ギィィ 靴の主人はなるべく静かに扉を開ききる。さすがに死者がいる中で騒ぐほど人が出来ていない訳ではない。 だが靴の主人に涙は無かった。何故だろう? そして遺族に近づく彼に気づいた一人がいぶかしげに問いかける。 「あんた……誰だ?」 と。 「私?私か?……そうだな、人呼んでネクロマンサー、とでも呼んでもらおうか」
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