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一口、上品に紅茶をすする。
甘い香りが鼻を抜け、爽やかだった。
「母さん…僕、もうあの学校には行きたくないや…」
カノンはボソッと言うと反対側のソファーに座った母を仰ぎ見た。
「!………何かあったの?学校は替えてもいいわ。でも、ちゃんと訳を話しなさい。」
母に言われ、カノンは紅茶を見詰める。
訳、といわれましても……
「べつにオッドアイの事じゃないんだ。ただ……何というか……」
口ごもるカノンに、母は心配そうに
「…分かったわ。あの人が帰るのは8時だから、それまでに訳をまとめなさい。
じゃないと転校させてあげませんからね」
最後にキッチリ忠告を残し、母はキッチンへ向かっていった。
カノンはつくづく真面目な家だよなぁ…と
思いながら紅茶の水面を見る。
ゆらゆらと水面が揺れる。
カノンは大きく溜息を吐いた。
「なんて言おう……?[転生者]だって話し、した方が良いかな……うー」
母から課せられた内容を考えるカノン。
正直言ってこんな事を言われたのは初めてだったので、
少しとまどったカノンであった。
「そういえば、校門に立ってた人…生徒には見えなかったなぁ」
そうだった。
黒髪を肩まで垂らし、血に似た赤い瞳でカノンを見詰めていた。
確か、190㎝はあったよなぁ………
身長。
「誰が?」
問うてきたのは母だった。
キッチンからでも聞こえるらしい。
「あ、うん…。帰って来る時、校門でヘンな人を見たんだぁ」
カノンの報告に、
母は皿洗いをしながらカノンを振り返る。
「不審者かしら…?何かされた?」
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