第一章†覚醒†

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「じゃ、行ってきます」 カノンは制服を羽織って言った。 黒い学ランの一般的な制服だ。 カノンは有名な服屋の社長の父親を持つお坊ちゃまだというのに、 お坊ちゃま学校に通おうとはしない。 もちろん父も母もしつこく勧めてきたが、 決意の固いカノンには無駄な事であった。 「あら、もうそんな時間なの? 行ってらっしゃい」 母は明るく微笑んで言う。 カノンはそれに手を振って応えた。 ドアを開け、出ようとした時だった。 「気をつけてな。」 父の声。 カノンは背中越しに聞いた父の声にクスッ、と少々堪え加減に笑った。 本当に父さんは静かだよなぁ… カノンは家を出て庭を通った。 池からは涼しげな水の音が聞こえている。 大きな庭を抜け、外に出ると大きい広場が広がった。 足元には手の平程の様々な形をした赤・茶のタイルが敷かれている。 右を向いた。目の前に広がる商店街は朝の7時だというのに ガヤガヤとにぎわっていた。 カノンは道を進みながら立ち並ぶ店を眺める。 約1キロその商店街を歩いた先に、 一般の普通過ぎる位の学校が建っている。 カノンは校門に立つと、 自分よりも遥かに大きい学校を眺めた。 「よぉ、服屋」 その そのまんま過ぎるニックネームに顔を歪ませ、振り返る。 カノンのすぐ後ろにヤツは居た。 「お~?何睨んでんだ。」 うざっ…… 僕コイツ本当嫌い。 がき大将でいじめっ子。 最悪最低窮まりない野郎だ。 カノンはケッと言わずとも顔にモロ出しの状態で 玄関へ向かう。 こんなヤツ、名前も覚えてないし…… カノンは溜息混じりに自分の靴箱を開けた。 「オイ。お前シカトするんだ? たいした度胸だよなァ。なぁ?!」
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