誰しも生まれるときは一人

2/4
前へ
/7ページ
次へ
紺碧の空は晴れ渡り、見やる大海は凪の浜を洗っている。 漂う潮の薫りに亡き母を偲ぶ。 思い出の母と浜を歩きながら、ふと人生を顧みる。 自分の人生は何だったのか。 倦怠と懶惰に塗れ刻々と時は過ぎ去っていった。 縹緲たる未来に光は無く、過ぎし日々は形骸化するばかり。 何も成すことなく、何を残すでもない。 刹那の感情に浸り生きてきた。 次の瞬間には寂寞の風に吹かれ、空っぽの私はそこに居ない。 未来も過去も空白に染まる人生。 沸き立つ感情など一切無い。 潮を孕む風が出てきた。 私は潮風に吹かれ砂に還った。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加