3人が本棚に入れています
本棚に追加
グリードが目を覚ますとまず体の右半分に冷たさを感じた。次にチャプチャプと水の流れる音に気づき、彼は自分が酔っ払って川に入って寝ていたことを知った。景色を見るに、町の外れに流れるゼルウィガー川のようだ。ゼルウィガーは川底が浅く、一番深いところでもグリードの膝より低い。
「こんなところで眠るのはアホか酔っ払いしかいないな……」
グリードはそうぼやいて身を起こした。服や長い金髪が濡れてぴったりと肌にくっついて気持ちが悪い。靴は何故か履いていなかった。お気に入りのブーツだったのに、と残念に思いながら頭を叩いて耳に入った水を出した。
そこでグリードは昨日の出来事を思い出した。昨日は昼から飲んでいて、仲間さえ呆れるほど暴れた。あまりに騒ぐので仲間たちはグリードを店から連れ出し、この小川に投げ込んだのだ。ブーツはその時仲間の一人がくれと言って持っていたっけ。
「くそ」
最近このような朝は珍しくない。昔はランバートが夜のうちに探しに来てくれていたのだが、今その男は自分の上司である。
「……くそったれ」
飲みすぎたのはランバートがおかしな命令をしたせいだ。おれが王都へ行く? しかも姫の守護騎士として??馬鹿な。
グリードは水を蹴った。
蹴ったが石に滑って尻餅をついてしまう。理由のわからない虚しさが体にまとわりついていた。
最初のコメントを投稿しよう!