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日は明けきっていた。帰ろうにも町は人で溢れているだろう。びしょ濡れで裸足の騎士が歩いていると知られれば、またランバートから小言を受けるかもしれない。
「どうせ今日も暇だ」
言い訳のように呻くと川から上がると服を脱いだ。彼は服を大きな岩の上に広げ、川縁のクローバーが群生している場所に寝転んだ。天気はよく、冷え切った体を温めるには最適だった。気持ちよくなってきたグリードは再び眠りにつこうとした。その時だった。
「あら、死体が動いているわ」
凛とした声にグリードは片目を開けた。少し離れた木立のところに一人の少女が立っている。町の娘だろう彼はと再び目をつむった。
「ん?」
目をつむったグリードだったが、ふと少女の姿を脳内で思い出す。豊かな金髪、決して派手ではないがレースをふんだんに使ったドレス、どれもその辺の町娘の特徴ではない。
それにあの青い瞳は??
「フラン様?」
ガバッと起き上がると、少女はグリードのすぐ目の前にいた。
「目が真っ赤じゃない。お酒の飲みすぎよ!」
ぎょっとしたせいで上擦った声でグリードは尋ねた。
「……お前、誰だ?」
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