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「来てくれるわよね」
「あんたがシモンと結婚してリェダ・メルディックになれば話はつく。そうすりゃあこのナムルも安泰――」
言いかけて、グリードは自分自身の言葉に戦慄した。
この娘がメルディック家へ嫁ぐ?
「なんてこと言うの! あいつと結婚するなんて絶対嫌よ」
「……おれも今そう思った」
「そうでしょう、って……はぁ?」
リェダは素っ頓狂な声で聞き返した。
「ないな……それは、ない」
グリードはぐるりと体の向きを変えて呟いた。
「あなたまだ酔っ払ってるの?」
「ああ、大丈夫……いや、悪かった。口から出任せに言うにも程があるよな。いやほんと」
リェダは不思議そうな顔でグリードを覗き込んだ。
「悪かった」
彼は心から謝った。
「もういいわ。でも絶対に嫌なのよ。だってあの男、お父様を馬鹿にして……」
「奴はそういう男だよ。父親もそうだ。人を蹴落とすのを生きがいにしている」
「シモンを知ってるの?」
「知ってるも何も奴はおれの幼なじみだ。同じ師匠に剣を習っていたこともある。コーコットという凄腕の剣の使い手だ」
リェダは目をぱちくりさせて言った。目の前の酔っ払いが王都で真面目に剣を振るっているところが想像できなかったのだろう。
「あなた何者なの? 王都で小さい頃はお母様とも会ったことがあって、シモンと幼なじみだなんて。あなた以外の騎士のことは知ってるのよ。でもあなたって晩餐会にも来ないじゃない? 顔さえ知らなかったわ」
「甘やかされてるのさ」
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