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「特別な騎士なんだってお父様が仰っていたわ」
「あんたは薔薇の宝石を持っているんじゃないか?」
「よく知ってるわね。お母様の形見なの」
リェダは首から下げたネックレスをドレスの下から引っ張り出した。細いチェーンに繋がれていたのは指輪だった。絡み合う蔦の中に薔薇が一輪咲いていて、その花びらの一枚が赤黒い宝石によって埋められていた。
「私の指にはまだ少し大きいからこうしているの。でもこの指輪とあなたが私にとっての特別っていう関係がわからないわ」
グリードは薔薇の指輪を見つめた。彼自身も見るのは初めてだったが、幼い頃に父から聞き及んでいたものと同じだった。
「素晴らしい」
思わず触れようとしているのに気づいて慌てて手を引っ込めた。
「触っても良いのよ。ほら、小さな石だと思うでしょう? でも違うの。よく見て」
リェダは首からチェーンを外すと、空へ指輪をかざした。銀の薔薇には透かしが入っていて、光を受けとめた花びらが中で鮮やかな赤に輝いていた。
「なんて綺麗なんだ」
グリードが再び指輪に手を伸ばしかけた時だった。
「ケダモノ! リェダ様から手を離せ!」
二人の真横から棒状のものが振り落とされ、グリードのを脳天に直撃した。
「いたぁ!」
大した打撃ではなかったが、二日酔いのグリードを数秒気絶させるには十分だった。彼は呆気なく意識を手放し、大の字になって倒れた。
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