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「そのリェダ姫が?」
「来年からリサロへ行くことになった」
「それはそれは。アカデミーにご遊学されるとか?」
「お前の任務は姫の護衛兼教育係だ」
「今なんて?」
「リェダ姫の護衛兼教育係」
「無理だ!」
グリードは叫けんだ。
「ファウスト様の前では言いにくいですが、おれには一番向かない任務ですのでお断りします」
そのまま踵を返してしまわなかった自分を誉めながらグリードは懇切丁寧な説明を始めた。
「おれは見ての通りのぐうたら騎士です。そりゃあ昔は爵位も持っていましたが、金欲しさに二束三文で売り飛ばしたような輩です。それにおれはリェダ姫の教育には宜しくない。女が好きだし――もちろんガキにゃ興味ないが――酒は毎晩浴びるように飲む。教会も時間を知るくらいにしか利用していない。おれにこの任務は無理です。なんなら勤勉で敬虔で禁欲的な騎士を紹介しますが? 例えば――ミランとか」
「自己主張がはっきりしている人間は好きだが、困ったことになったね」
困ったと言ったくせにファウストはふわりと微笑んだ。
「君のことをランバート団長から聞きました。私はこのナムルで君ほどの適任者はいないと思っています」
グリードがランバートを見ると高速で視線をそらした。どんな話をしたんだと睨みながらグリードはため息をついた。
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