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「じゃあ仕方ない。他の騎士団で探してください。おれはリサロになんか行きたくない」
「何駄々をこねてんだ。流れの傭兵になるしかなかったお前を拾ってやったのはリシン騎士団だぞ。義務を果たせ」
「正しくは前団長のタイルズが拾ってくれたんだ。ああもう、今となっちゃあそちらの方が良かったよ」
グリードはぼやいた。
「少しでも騎士道が残ってるなら何故リェダ姫がリサロに行くか聞いてみたらどうだ」
「王城の女たちとピーチクパーチクやるやつでしょう?」
つまりは王家の姫君の話し相手や世話役である。しかしそれなら護衛などいらないはずだ。それに気づいて初めてグリードは首を傾げた。
「十年の間に脳みそまで腐ったようだな、グリード?」
「……否定はしないが」
溜め息をついてグリードはファウストの方に顔を向けた。
「理由を聞いても?」
十年で脳みそどころか精神まで腐りきっていると自認するグリードだが、それでも尋ねたのは単なる好奇心からだった。
ファウスト・ティズシは王族に連なる人物であることはグリードも知っている。それに亡くなったファウストの妻は前王サロエのいとこだった。しかし十五年前にサロエ王一家が暗殺されてからは議会が力を持ち、サロエ王に依存していた貴族たちは次々と没落するか取り潰しされている。
ティズシ家も現王ルスランや議会から敵視される貴族の一つである。それにも関わらずティズシ家が今日まで生き残ってこれたのはファウストがリシン聖騎士団の管理者だからだ。教会の持ち物にさすがの議会も最終的な手が下せていない。
ティズシ家は今のところ安泰、のはずだ――
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