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「先日、メルディック議員から手紙を貰いましてね」
ファウストは深緑の線で縁取られた封筒をグリードに渡した。
「メルディック? クオン・メルディック?」
興味半分に聞いていた耳に飛び込んだ思いがけない人物の名にグリードは叫んだ。ランバートはにやりと笑うと、グリードの腐りきった騎士道を叩き起こすに十分な言葉を口にした。
「いや、息子のシモンだ」
「シモン……シモンね」
「今や彼は議会の長だ。国の隅々までシモン議員が取り仕切っているよ。知っていたか?」
グリードは素直に首を横に振った。
メルディックの名はグリードにとって忘れることのできない男の名前だ。グリードの手がわなわなと震える。
「彼が言うには王女様が最近寂しく過ごされているそうなので、娘のリェダに話し相手になって欲しいそうだ。去年会った時に気に入られたと」
「嘘だな」
グリードはきっぱりと言った。
「いや、事実だ。だが本当に気に入ったのはメルディック議員の方だろうな」
「そう言おうと思ってた」
「何憤慨してるんだ、グリード?」
「あんたは黙ってろ。ニヤニヤ笑うのもやめろ」
グリードは苛々して言った。
「それで君にリェダの護衛を頼もうと思ったんだ」
「彼に一矢報いるチャンスができたわけだ。良かったな、グリード」
「いい加減にしろよ、ランバート。十七才まで小汚いくまのぬいぐるみを抱かないと眠れなかったことをみんなにバラすぞ」
ランバートが唇を噛んで黙ったので、グリードは咳払いをして続けた。
「――失礼。とにかく、おれはある理由から一生リサロに行かないと神に誓ったんですよ。このリシン教会で」
「唯一礼拝堂に行った理由がそれかい」
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